何故ならば‥
家は車のような「工業化製品」ではなく、「手作りが基本」ですから地場産業の方がお客様にとっては”都合がいい” という事です!
以下が、その具体的な理由です。
●30年間で「価格2倍」
1996年頃、”注文住宅”の販売価格は大手住宅メーカーでも地域工務店でも同じように、「坪単価70万円」前後が主流でした。
30年経過した2025年の今、大手住宅メーカーでは「坪120~170万円」と「2倍」増しています(地域の工務店では坪80~90万円が主流です)。
“同じような仕様”で作る家が、大手メーカーと工務店とで何故こんなに大きな価格差が発生するのか!・・その原因を以下で解説します。
●注文住宅の販売価格とは
経済も所得も「30年間」成長しない日本社会において、物価高やコメの価格”2倍”で大騒ぎとなるのに、何故、注文住宅の価格”2倍”が社会問題にはならないのか? とても不思議なことです。
そもそも、住宅価格とは=【①手間賃】+【②材料費】+【③諸経費】の合計で決まります。
●業界の不都合な真実
⇒【①手間賃】は2倍になったの?
業界で働く職人や関係スタッフの給料は30年間で2倍にはなっていません。近年の人手不足で上昇傾向は間違いないところですが、過去30年スパンの賃金統計から手間賃(人件費)は横ばいというのが実体です。
⇒【②材料費】は2倍になったの?
建築材料は進化を続けていますが、今から30年前も”素敵”な・システムキッチン・ユニットバス・洗浄トイレ・洗髪洗面化粧台・断熱ベアガラス・フローリング・建具・クローゼット・・々、憧れのアイテムのオンパレードでした。もちろん個々の材料は魅力的な進化を遂げていますが、それは時代の変化に沿った程度のものといえます。材料費に大きな影響があると言われる構造躯体の木材についても価格高騰した事実は確認できません。例えば「3Dプリンター住宅」のような”常識が変わる変化”での材料費の高騰なら理解も及びますが、30年間で価格倍増の理由は見当たりません。
⇒【③諸経費】は2倍なの!
ですので、ここ最近の「人手不足」や「物価高」を理由にした注文住宅の建築費(①手間賃+②材料費)高騰はすこし偏ったものです。そして、+【③諸経費】は事情が異なります。(後述します)
●住宅市場(マーケット)の変化
〇1996年の「年間新設住宅着工数」は「163万戸」。
〇2025年は「79万戸」(推計)
30年間で着工数は「1/2以下」となり、今後も減少を続けると予測される斜陽マーケットです。30年間で市場が「半減」し価格が「倍増」した戸建て業界!・・少子高齢化の日本社会の住宅事情を激変させています。
●大手住宅メーカーの株価
さて、【③諸経費】は2倍なの? に話を戻します。
(①手間賃+②材料費)が大きく変化しない中で販売価格が2倍に膨らんだ原因は、③諸経費です。
以下は”非常に単純”な例えですが・・
〇1996年/2,000万円だった家が
〇2025年/4,000万円の家になった。
「差額の2,000万円」、おおざっぱに表現すれば【③経費の差】です。
〇1996年/2,000万円⇒経費600万円(30%)で経営可能。
〇2025年/4,000万円⇒経費2,000万円(50%)で経営可能。
住宅価格の半分が「手間賃・材料費」、残りの半分が「諸経費」。
諸経費が600万円で経営可能だったものが、今は諸経費が2,000万円を確保できないと経営が成り立たないという意味です。
マイホームを取得するユーザーにとっては、”釈然”としない話です。

●注文住宅は、一部富裕層のもの?
庶民的な「30坪クラス」の注文住宅を大手住宅メーカーに依頼すると、特別な豪華仕様ではなくても、首都圏では4,000~4,500万円です。
住宅ローンの負担割合は(年収の多い人で)4割程度ですので、仮に全額ローンを組む場合は「1憶円の年収」で取得可能になる価格帯です。土地の取得費や諸費用が別に必要と考えれば、住宅メーカーに依頼できる人は「一部の富裕層」に限られた人の話となりつつあるのが現実です。最近のデータでも大手住宅メーカーの平均受注額は5,500万円超。世帯年収(中央値)405万円/年収13倍の水準です。
●ビジネスモデルの終焉
「総合展示場」が日本に初めて設置されたのは1966年(60年前)で、年170万戸着工の時代から今も同じ「ビジネスモデル」は続いています(解体前提のモデル棟・職業営業マン・膨大な広告・ブランド維持)。
数が売れていた時代に成立したビジネスモデルは、③諸経費(利益含む)を拡大させないと経営が成り立ちません。
1996年/2,000万円⇒2025年/4,000万円の家になった。「差額の2,000万円」、おおざっぱに表現すれば【③経費の差】。
経費600万円(30%)⇒2000万円(50%)を建築ユーザー側から見れば顧客不在の時代遅れです。
●地域工務店のビジネスモデルとは
工務店が総合住宅展示場に出店することはありません。お客様から注文いただいた家を完成させて、土日にお借りして一般公開する「街角展示場」方式で新規客に出会う手法が注文住宅の営業モデルです。また、増加するリフォームニーズにきめ細かく対応して、地域社会での「住まいの便利店」の地位を確立しています。住宅メーカーとはコスト構造が異なり、30年前の水準/2000万円、経費600万円(30%)で経営が成り立つのが工務店です。
●建築ユーザーに潜在する不満
デザインも性能も進化しているものの「劇的な変化」が見られない世界で60年前のビジネスモデルを続ける結果、販売価格が「2倍」となった現実に、”建築ユーザー”の不満や疑問は「潜在」しています。
米価(主食のお米)が、1年で2倍になり社会問題化したように・・

●工務店への不満と期待
建築ユーザーから見た地域工務店のマイナス的な印象は、「デザインセンスはどうなの」「関係者との相性が心配」の2点です。大手の優れた総合提案力に慣れた建築ユーザーにとって、地域工務店の2点は大きな懸念点です。
しかし、デジタル社会の進展が大手と工務店の区別ポイントを縮めてきました。
・お客様は、「インターネット」であらゆる情報を把握して
・お客様は、「SNS」で他人や経験者の評判を確認して
・お客様は、わからないことは「ChatGTP」や「AI」で調べます。
その結果、お客様は「現実世界へと出向き」、現場に詳しいプロに相談することを希望します(デジタル⇒アナログ)。
デジタルだけでは「絶対」に解決しないのが家づくりであり、根底には販売価格2倍という”珍現象”を解消したいと言う消費行動の蓄積もあります。
家づくりの地元店は、「デザインセンスに優れ」「家づくりの本質をお客様と共有できる」優良な工務店情報のみが確認できます。
