目次
1.耐震性能のこと(2025.1投稿)
2.断熱性能のこと(2025.2投稿)
3.諸費用のこと(2025.3投稿)
4.ZEHのこと(2025.4投稿)
5.不都合な真実(2025.5投稿)
1.耐震性能のこと
建物の耐震性能を表すには「等級1~3」で評価されます。地震に対する建物の強度は、住宅の品質確保に関する法律(品確法)に基づく住宅性能表示制度の評価項目の一つで、地震に強い住宅を選ぶ際の目安となり地震保険料の割引や住宅ローンの金利優遇など、様々なメリットも享受できます。
等級1/建築基準法で定められている最低限の耐震性能を満たしています。
等級2/等級1の1.25倍性能を有し長期優良住宅に認定される場合があり。
等級3/等級1の1.5倍の性能を有し地震保険料の割引も受けやすくなります。
耐震等級の確認方法/住宅性能評価書には、耐震等級を含む住宅の性能評価が記載されており、国土交通省に登録されている住宅性能評価機関に依頼して取得できます。
❒耐震等級を高めるメリット
・耐震等級の高い住宅は、地震による倒壊や損傷のリスクを軽減できます。
・耐震等級の高い住宅は、地震保険料が割引になる場合があります。
・耐震等級の高い住宅は、住宅ローンでの金利優遇措置が受けられる場合があります。
・耐震等級の高い住宅は、売却時の価格が高くなる可能性があります。
❒耐震等級を高めるデメリット
・耐震等級を高めるには、設計、部材、工事費が増加します。
・耐震等級を高める為に構造設計変更が必要になる場合があります。
❒まとめ
耐震等級は地震に強い住宅を選ぶ上で重要な指標です。耐震等級の高い
住宅は地震による倒壊や損傷のリスクを軽減し、地震保険料の割引や住
宅ローンの金利優遇などのメリットも享受できます。
一方で、建築コストの増加や設計の変更などのデメリットも存在します
が、やはり地震の多い日本では耐震等級3をお勧めしたいところです。
2.断熱性能のこと
住宅の断熱性能は等級で表し、示す等級は数字が大きいほど断熱性能が高くなります。2022年に「等級5」が追加され、その後「等級6」「等級7」が追加されました。そして、2025年以降の新築住宅では、「等級4」以上が義務化され、2030年には「等級5」以上が義務化される予定です。
断熱等級は、住宅の外壁、窓、天井、床などの断熱性能と、気密性(すき間からの空気漏れ)を総合的に評価して決定されます。
・等級1~4は、現在の省エネ基準をクリアするレベル
・等級5は、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準を満たし、省エネ性能を一段と高めたレベル。
・等級6は、等級5よりもさらに断熱性能が高く、冷暖房にかかるエネルギー消費量を削減できるレベル。
・等級7は、最高等級で、断熱性能を最大限に高めたレベル。一次エネルギー消費量を40%削減できるレベル。
❒断熱等級が高い住宅のメリット
・断熱性能が高いと、暖房の熱や冷房の冷気が外に逃げにくく室内の温度が一定に保たれる為、冷暖房の効率が向上してエネルギー消費量を抑えることができます。
・住まい環境が外気の影響を受けにくくなり、冬は暖かく、夏は涼しい快適な室内環境を実現できます。
・室内温度や湿度が安定することで結露の発生を抑制できるため、健康に配慮した住宅環境が実現できます。
・断熱性能の高い住宅は、省エネ性能が高い、エネルギーコストが安く、地球環境にも優しい住宅として資産価値の向上にもつながります。
❒断熱等級が高い住宅のデメリット
・断熱性能の高い住宅とは、高性能断熱材の使用や断熱材の量が必要になります。また窓などの開口部には高性能な部材を使用するため、建築コストの上昇に直結するため、建築取得費は高くなります。
・断熱性能が高い住宅とは、構造躯体を高度に密閉するような構造となることから、躯体の壁体内結露発生による耐久性に影響する懸念が潜在します。その為、充分に乾燥した木造躯体の使用と、適切な機械換気と計画換気が必要となります。尚、室内は結露対策により結露リスクは軽減できます。』❒まとめ
住宅の断熱化は重要な検討ポイントです。2025年以降、建築物省エネ法により、新築住宅・非住宅ともに省エネ基準の適合が義務化され、具体的にはこれまでの「最高等級」だった「断熱等級4」が「最低基準」となり住宅の断熱は必須です。新築住宅を検討する際には、断熱等級の確認と、高断熱住宅のメリット・デメリットを理解することがとても重要です。
3.諸費用のこと
新築住宅を取得する際にしっかり予算化したいのが「諸費用」です。「工事請負契約額」の他に必要な費用全体を把握した上で自己資金・資金調達の計画は必須です。諸費用と一般的に建築工事価格の5~10%程度が目安と言われますが、具体的な項目を挙げてみます。(今回は土地取得関係費用は除きます)
《ケース》
❒工事請負金額3,000万円 ❒住宅ローン利用額2,500万円
注)あくまても目安としてご確認ください!
・請負契約書用印紙税 2万円(1000~5000万円の契約)
・融資手数料 5万円程
・ローン保証料 30~40万円程
・団体信用生命保険料 30~50万円程 通常金利+0.2~0.3%程度
・火災保険料 20~30万円程度(10年一括契約の場合)
・地震保険料 10~20万円程度(5年一括の場合)
・地鎮祭費用 5万円程
・上棟式費用 5万円程
・表示・保存登記費用 40万円程(登録免許税、司法書士手数料)
・抵当権設定登記費用 15万円程 住宅ローン借入額×0.4%
・不動産取得税 20~30万円程
・引越し関係費用 20~30万円程
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想定される諸費用 200万円~300万円
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その他
・家具家電の買い替え費用予算組 100万円
・固定資産税 固定資産税評価額×税率1.4%(標準税率)
・都市計画税 固定資産税評価額×税率0.3%(上限)
諸費用は、住宅購入資金計画に大きく影響するため、事前にシミュレーションをして十分な資金を用意しておくことが重要です。仮に注文住宅の契約価格が3,000万円とすると、200万円~300万円(土地がある場合)くらいが諸費用の目安ということになります。尚、諸費用は基本的には住宅ローンの借入額に含まれない点に注意が必要です。
4.ZEH(ゼッチ)のこと
ここ数年で「ZEH」という言葉(TVCMなど)に接する機会も増えました。
ZEH(ゼッチ)とは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略で、住まいで消費するエネルギーと、太陽光発電などで創り出すエネルギーの「収支」が年間で実質的にゼロとなることで、「省エネ」と「創エネ」を組み合わせで、エネルギー消費をできるだけ少なくする住宅のことです。
《ZEHの3要素》
1.断熱:高断熱・高気密の性能住宅は、室内の温度が外気に影響されにくく、快適な室内環境を保つことでエネルギー消費量を抑えてくれます。
2.省エネ:給湯器やエアコンなどの住宅設備は高効率なものを採用して、HEMS(Home Energy Management System)などでエネルギー消費量を管理削減します。
3.創エネ:太陽光発電システムやエネファームなどの「再生可能エネルギー」設備を導入し、自らエネルギーを生み出します。
❒ZEH住宅のメリット
・断熱・省エネによって、暖房や冷房のエネルギー消費を抑え、光熱費を大幅に削減できます.
・太陽光発電システムや蓄電システムがあれば、災害時や停電時にも電気が供給できます。
・(V2H)ビークル・ツウ・ホームとして、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)のバッテリーに蓄えられた電力を家庭用蓄電池のように活用することが可能になります。
・断熱性の高い住宅は、部屋間の温度差が小さく、ヒートショックのリスクを軽減できます。
・再生可能エネルギーを導入することによるCO2排出量の削減は、地球環境への負荷を低減できます。
❒ZEH住宅のデメリット
・ZEH住宅は、一般的な住宅よりも初期費用が一定程度高くなりますので、資金計画の際はその費用を見積ことがポイントです。
・太陽光発電システムや蓄電システムなどのメンテナンス費用が必要となります。また、設置後20年くらい経過すると発電効率が低下します。
・太陽光発電は、設置地域や天候、季節などによって「創エネ量」が左右されますので、業者からシュミレーションデータの取得もお勧めします。
❒まとめ
政府は2030年を目標に、すべての新築住宅で高い省エネ性能を義務づける方針を打ち出し、すべての新築住宅に「ZEH基準」が求められるようになる見込みです。
そして、エネルギー効率の良い暮らしが実現できるよう、国も支援を強化しており、令和7年度(2025年4月1日から2026年3月31日)のZEH補助金は環境省の「55万円」です。
5.不都合な真実
家は車のような「工業化製品」ではなく、「手作りが基本」ですから地場産業の方がお客様にとっては”都合がいい” という事です!
以下が、その具体的な理由です。
●30年間で「価格2倍」
1996年頃、”注文住宅”の販売価格は大手住宅メーカーでも地域工務店でも同じように、「坪単価70万円」前後が主流でした。
30年経過した2025年の今、大手住宅メーカーでは「坪120~170万円」と「2倍」増しています(地域の工務店では坪80~90万円が主流です)。
“同じような仕様”で作る家が、大手メーカーと工務店とで何故こんなに大きな価格差が発生するのか!・・その原因を以下で解説します。
●注文住宅の販売価格とは
経済も所得も「30年間」成長しない日本社会において、物価高やコメの価格”2倍”で大騒ぎとなるのに、何故、注文住宅の価格”2倍”が社会問題にはならないのか? とても不思議なことです。そもそも、住宅価格とは=【①手間賃】+【②材料費】+【③諸経費】の合計で決まります。
●業界の不都合な真実
⇒【①手間賃】は2倍になったの?
業界で働く職人や関係スタッフの給料は30年間で2倍にはなっていません。近年の人手不足で上昇傾向は間違いないところですが、過去30年スパンの賃金統計から手間賃(人件費)は横ばいというのが実体です。
⇒【②材料費】は2倍になったの?
建築材料は進化を続けていますが、今から30年前も”素敵”な・システムキッチン・ユニットバス・洗浄トイレ・洗髪洗面化粧台・断熱ベアガラス・フローリング・建具・クローゼット・・々、憧れのアイテムのオンパレードでした。もちろん個々の材料は魅力的な進化を遂げていますが、それは時代の変化に沿った程度のものといえます。材料費に大きな影響があると言われる構造躯体の木材についても価格高騰した事実は確認できません。例えば「3Dプリンター住宅」のような”常識が変わる変化”での材料費の高騰なら理解も及びますが、30年間で価格倍増の理由は見当たりません。
⇒【③諸経費】は2倍なの!
ですので、ここ最近の「人手不足」や「物価高」を理由にした注文住宅の建築費(①手間賃+②材料費)高騰はすこし偏ったものです。そして、+【③諸経費】は事情が異なります。(後述します)
●住宅市場(マーケット)の変化
〇1996年の「年間新設住宅着工数」は「163万戸」。
〇2025年は「79万戸」(推計)
30年間で着工数は「1/2以下」となり、今後も減少を続けると予測される斜陽マーケットです。30年間で市場が「半減」し価格が「倍増」した戸建て業界!・・少子高齢化の日本社会の住宅事情を激変させています。
●大手住宅メーカーの株価
さて、【③諸経費】は2倍なの? に話を戻します。
(①手間賃+②材料費)が大きく変化しない中で販売価格が2倍に膨らんだ原因は、③諸経費です。
以下は”非常に単純”な例えですが・・
〇1996年/2,000万円だった家が
〇2025年/4,000万円の家になった。
「差額の2,000万円」、おおざっぱに表現すれば【③経費の差】です。
〇1996年/2,000万円⇒経費600万円(30%)で経営可能。
〇2025年/4,000万円⇒経費2,000万円(50%)で経営可能。
住宅価格の半分が「手間賃・材料費」、残りの半分が「諸経費」。
諸経費が600万円で経営可能だったものが、今は諸経費が2,000万円を確保できないと経営が成り立たないという意味です。
マイホームを取得するユーザーにとっては、”釈然”としない話です。
●注文住宅は、一部富裕層のもの?
庶民的な「30坪クラス」の注文住宅を大手住宅メーカーに依頼すると、特別な豪華仕様ではなくても、首都圏では4,000~4,500万円です。
住宅ローンの負担割合は(年収の多い人で)4割程度ですので、仮に全額ローンを組む場合は「1憶円の年収」で取得可能になる価格帯です。土地の取得費や諸費用が別に必要と考えれば、住宅メーカーに依頼できる人は「一部の富裕層」に限られた人の話となりつつあるのが現実です。最近のデータでも大手住宅メーカーの平均受注額は5,500万円超。世帯年収(中央値)405万円/年収13倍の水準です。
●ビジネスモデルの終焉
「総合展示場」が日本に初めて設置されたのは1966年(60年前)で、年170万戸着工の時代から今も同じ「ビジネスモデル」は続いています(解体前提のモデル棟・職業営業マン・膨大な広告・ブランド維持)。
数が売れていた時代に成立したビジネスモデルは、③諸経費(利益含む)を拡大させないと経営が成り立ちません。
1996年/2,000万円⇒2025年/4,000万円の家になった。「差額の2,000万円」、おおざっぱに表現すれば【③経費の差】。
経費600万円(30%)⇒2000万円(50%)を建築ユーザー側から見れば顧客不在の時代遅れです。
●地域工務店のビジネスモデルとは
工務店が総合住宅展示場に出店することはありません。お客様から注文いただいた家を完成させて、土日にお借りして一般公開する「街角展示場」方式で新規客に出会う手法が注文住宅の営業モデルです。また、増加するリフォームニーズにきめ細かく対応して、地域社会での「住まいの便利店」の地位を確立しています。住宅メーカーとはコスト構造が異なり、30年前の水準/2000万円、経費600万円(30%)で経営が成り立つのが工務店です。
●建築ユーザーに潜在する不満
デザインも性能も進化しているものの「劇的な変化」が見られない世界で60年前のビジネスモデルを続ける結果、販売価格が「2倍」となった現実に、”建築ユーザー”の不満や疑問は「潜在」しています。
米価(主食のお米)が、1年で2倍になり社会問題化したように・・
●工務店への不満
建築ユーザーから見た地域工務店のマイナス的な印象は、「デザインセンスはどうなの」「関係者との相性が心配」の2点です。大手では住生活への総合提案力を得意としますが、大手のサービスに慣れた建築ユーザーにとって工務店の2点は懸念点です。しかし、デジタル社会が進む今は工務店と大手のポイントは縮まっています。
・お客様は、「インターネット」であらゆる情報を把握して
・お客様は、「SNS」で他人や経験者の評判を確認して
・お客様は、わからないことは「ChatGTP」や「AI」で調べます。
その結果、お客様は「現実世界へと出向き」、現場に詳しいプロに相談することを希望します(デジタル⇒アナログ)。
デジタルだけでは「絶対」に解決しないのが家づくりであり、根底には販売価格2倍という”珍現象”を解消したいと言う消費行動の蓄積もあります。
家づくりの地元店は、・デザインセンスに優れ・家づくりの本質をお客様と共有できる「優良な工務店」ばかりです。